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廃墟


ナレーション:aruhi-no-dekigoto...

ここは識が店長を勤めるゲームセンター。
そこへ一人の男がやって来た。
白を基調とした、一風変わったデザインの帽子を深く被った金髪の男。
良く言えば精悍な顔つきをした、悪く言えばガラの悪いこの男。名をニクスと言う。
彼はバイトを終えいつもの様に…と言っても今日はちょっと早めのご来店。
ソレがいけなかったのか、店内には見知った顔が一人として見当たらない。
「あれ…早すぎたか…?」
まぁいいか。と、これまたいつもの様にIIDXの筺体に向かう。

「ん?ありゃあ…」
筺体には既に先客がいたのだ。
「ツガル…?」
実は彼、挨拶した事はあっても、今までほとんどツガルと会話したことが無いのである。
それだけに彼女に対する印象が、かな〜り薄い。
(話し掛けた方がいいよな…お互い独りっきりだし。いいチャンスだ。うんうん。)
そう…ツガルもまた、いつもとちょっと違っていたのだ。

ゲーセンに居る時には、常に行動を共にしている筈のダルマの姿が今日はない。

(喧嘩でもしたのか…?)
そんな事を考えている内に、ツガルはゲームオーバーになっていた。
筺体から降りたツガルは、こちらに気付いたらしく、
「あっ…ニクスさん。こ、こんばんわ…」
と、弱々しい声で軽く会釈する。
「おう…(クリア出来なかったのが相当ショックだったらしいな…)」
それもその筈、なんとゲージが2%という無残な結果だったのだ。
流石に可愛そうに思ったのか、自己中な彼からは想像出来ない、言葉を発した。

「おい…もう一回、お前やってもいいぜ」

この言葉を他の連中が聞いたら、ちゃぶ台をひっくり返すほど驚いてしまう様な、そんな言葉。
「え…そんな…」
「いいから!やれっつってんだろ!!」
ぶっきらぼうに言うとニクスはツガルを無理矢理筺体に戻した

数分後。

「あの…有り難うございます!」
「気にすんなって(照)」
そう言ってニクスはツガルと入れ替わり、筺体に100円を投入した。
ニクスが選ぶ曲はどれも高難易度の物ばかり。
ツガルにとっては到底無理な曲も、彼はいとも簡単にクリアしてしまう。
しかもこれで本気を出していないと言うのだから、本気を出したらどうなるのかを考えるだけで鳥肌が立つ。
ツガルはただ呆然とニクスのプレイを見ていた。

さらに10分後。

「ふぅ…(まっ、こんなもんだな)」
筺体からはお馴染みのスタッフロールが流れている。
客がいつになく少ない為、普段は他の雑音に紛れてあまり聞くことが出来ないエンディングテーマも、今日はやけに大きく感じる。
(まだ誰も来てないのかよ…。つーか何でこんな見事にいないんだ?)

ニクスはとりあえず、ツガルに交代しようとした。が、

「おーい…って、あれ?」
後ろで順番を待っている筈のツガルの姿がない。
「一人っきりかよ!!!」
さまぁ〜ずの三村のようなナイス(?)ツッコミをかましたが、相手がいない為とても空しい物になってしまった。
それが更に、ニクスの一人きりだという悲しい現実をより確かな物にしていた。
「そーいや、いつもは士朗とかデュエルが居たんだよな…」
悲しみに暮れるニクス(笑)

がっくりと頭を垂れるニクスかな。
「俺は13歳のガキにも見捨てられたのか…」
「はい…?」
頭を上げるとそこにはツガルがいた。

ナレーション:おやおや、ツガル嬢はニクス君を見捨ててはいなかったようです。よかったね☆

「ツ、ツガル!!?」
素っ頓狂な声をあげるニクスにツガルはある物を差し出した。
お茶である。

どうやらこれを買いに行っていたらしい。
「あ、あの…さっきのお礼に…こんな事しか出来ませんけど…」
ニクスは泣きそうになった。
「さんきゅーな」
お茶を受け取ると、彼はツガルの頭をぽんぽんと撫でた。
ツガルはとても嬉しそうに笑った。

あっという間にお茶を飲み干したニクス。
実は結構、喉が乾いていたのだ。
ツガルを見ると自分とは違う物を飲んでいる。
りんごジュースだ。
「お前、りんごジュース好きなのか?」
「はい。林檎が大好きなので…」
「ふーん」

(英利のヤツも林檎が好きだったよな…)
このまま会話が途切れるのを恐れたニクスは、とりあえず林檎の話題を振ってみる事にした。
「英利っているだろ?アイツも好きみたいだぜ。林檎」
「え、ホントですか?英利さんって…どこの出身でしたっけ…?」
かかったー!!!!妙な喜びを覚えるニクス。
「あー…確か、長野って言ってたぜ。それでよ…」
こうして二人は林檎の話題から、自分の故郷の話にまで発展しそれなりに盛り上がってきた所で、
「お―――いッ!ニクス―――ッ!!」
と呼ぶ声が。

声の主はバンダナをした、褐色の肌の男。
「デュエル!?てめぇ遅えんだよ!!!」
「ワリィ、ちょっとココに来るまでに職務質問受けちまってよー」
確かに、緑色の髪で、バンダナで目元まで隠し、チェーンをジャラジャラさせているファッションで夜の街を徘徊していれば、お巡りさんじゃなくても怪しむ。
それに加え…

「で…何て答えたんだよ」
「素直に元フーリガンです。って言ったら余計に…」
「馬鹿かお前は!!!!!」

「ぷッ…あははは」
『???』
「あ!すいません…その…」
二人の漫才ちっくな掛け合いに思わず笑ってしまったツガル。
「いやいや、いいって。あ…そうだ。今度、IIDXのコーチしてやるよ」
「ホントですか!?」
ツガルは、ぱっと顔を輝かせた。
(う…か…可愛い)
「お、おう、方言マニアのバンダナ野郎に邪魔された話の続きもその時だ」
「おんやぁ?どーゆー風の吹き回しだいニクス君??」
ニヤニヤしながらデュエル。
「君なんか付けんじゃねぇ―!!!!!!!!」
「何度でも言ってやるよ〜ニクスく〜ん♪」
「殺―――すッ!!!!!!!!!」

追いかけるニクス。逃げるデュエル。
そんな二人を見て笑うツガル。

「ツガル〜。今度、また俺に津軽弁教えてくれよな!」
ニコニコとデュエル。
「それは…嫌です(きっぱり)。」

―撃沈―


あとがきっく
ニクツガ(?)。微妙。マイナー万歳。そして最後はデュニク。
何だかニクスがいい人だなぁ。
珍しくアッチ系じゃないよママン!!これならクラスの方々に見せても平気っぽいぞ☆
それなりに疲れました。
今度はやっぱりアッチ系になりそうだ。やはり百合路線で行こうか。うん、そうしよう。

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